「前パン愛好会」にようこそ! 

 電車といえば、やっぱり前パンがかっこいい!
 そんな皆さんに、前パンを揃えてみました。
 えっ?前パンって何??という方。
 先頭車の前側にパンタグラフがある電車の事です。
 ぜひ、前パンの魅力にはまって下さいませ♪

前パン・第8回 103系3500番台「国電顔の前パン」

最多両数「3447両」を誇った103系。
国鉄の大量生産の象徴として、大都市の通勤電車として同じ顔の電車が走っていました。
それにもかかわらず、新製時から前パンの車両はありませんでした。
ただ、改良を加え、路線を変えたことで、誕生しました。
播但線用の103系3500番台です。

最も作られた電車・103系

1963年に、101系を基に経済性を重視して誕生した103系。
1984年までに、3,447両も製造されました。
地下鉄乗り入れなどの特殊な用途を除き、低運転台と高運転台の2種類の顔で作られました(細かな違いはありますが)。
通勤区間では各地で見られたため、国電をイメージする顔になっていきました。

2002年12月9日 武蔵野線新三郷駅

パンタ1基では、前パンにならない…

長編成で運転する車両の場合、1編成に動力車が何両もあります。
編成中に複数必要なパンタグラフは、動力車1両に1基のみでも、複数の動力車があるので十分です。
そうすると、パンタ支障時の影響などを考えて、パンタグラフは中ほどにする車両が多くなります。
103系先頭車にもクモハがありましたが、パンタは1両に1基なので、後パンになっています。
なので、正面からみたら、クハもクモハも違いはありません。
どちら側を見ても、同じ顔になります。

改造に改造を重ね、103系に前パンが!

ところが、主要路線に205系など新型の車両が投入されると、
103系も地方に異動になり、ローカル線の短編成での運用になりました。
4両編成、3両編成、さらには2両編成での運用です。
山手線や京浜東北線など、10両編成で運行するところでは、動力車がたくさんありパンタも複数あってよかったのですが、
短編成だと、パンタは1編成に1個になってしまいました。

実際は、1ユニットに1基のパンタがあれば十分ですが、
早朝の架線のツララなどでパンタが壊れる事に心配になった会社がありました。
JR西日本です。
そこで、2両編成で運行する車両に、運転台側に霜取りパンタを増設しました。
後パンが2パンになったんです。
そうです、「前パン」の誕生です!
播但線の103系3500番台が、その対象になりました。

103系3500番台の誕生の流れ

播但線用の103系は、専用の3500番台になっています。
ただ、新製されたものではありません。
改造に改造を重ねて、紆余曲折によって誕生しました。
新製からの流れを見てみます。

クモハ103-3500番台クモハ102-3500番台
1974~81年 新製1974~81年  新製
 モハ103-0’番台 モハ102-0’番台
1988~89年 先頭車改造
 (103系ー0’番台と同様の低運転台)
 → クモハ103-5000番台
1994~95年 改造
 (電気連結器の取り外しによる改番)
 → クモハ103-2500番台
1997~98年 改造(40N更新工事)1997~98年 先頭車改造
(103系ー0’番台と同様の低運転台
 ・40N更新工事)
 → クモハ103-3500番台 → クモハ102-3500番台
改造の流れ
クモハ103-3500クモハ102-3500
3501モハ103-427モハ102-583
3502モハ103-480モハ102-636
3503モハ103-485モハ102-641
3504モハ103-499モハ102-655
3505モハ103-727モハ102-883
3506モハ103-729モハ102-885
3507モハ103-770モハ102-2027
3508モハ103-772モハ102-2029
3509モハ103-780モハ102-2037
新製時の元車(+156 or +2057)

実は、新製”ピュア”先頭車ではない

これをみて、お気づきですね。
実は、元々は中間車のユニットだったんです。
クモハ103+モハ102のような、純粋な先頭車ではありません。
クモハ103-3500番台は、1988年の学研都市線用の改造で先頭車になりました。
新製から10年程度の車両なので、まだ長く使う意図があったんでしょうね。
新製先頭車と同様の先頭ブロックが作られて結合されたようです。

相方のクモハ102-3500番台も、1997年の改造だったのがよかったです。
というのも、
1999年のクモハ114の改造では115系であっても切妻になり、
さらに2000年の先頭車改造では、あのクモハ113-3800番台”サンパチくん”が誕生。
JR西日本は、簡易な造りにした先頭ブロックの切り継ぎだけでなく、妻面だけの交換など、
なりふり構わずの短編成化を進めていきました。
前と後ろの顔が違ってもお構いなしです。
趣味的には嬉しいんですけどね。
ということで、簡易先頭車化改造になる前、ギリギリの1997年の改造で、クモハ103-3500番台と同じ顔、
つまり、新製先頭車と同様の顔を持つことができました。
(同時期に同数が廃車になった、クハ103から流用された説もあります。)

2編成だけ前パンに

この経緯により、103系3500番台は、2両編成9本で誕生しました。
この時、嬉しいプレゼントが。
なんと、2編成(BH03,BH09)のクモハ103に、前パン準備工事がされました!

photo by Corpse Reviver Wikimedia Commonsより
photo by 永尾信幸 Wikimedia Commonsより

パンダ台が、運転台側にもありますね。
ついに、103系に前パンが誕生すると待ち遠しかったのですが、
そこからしばらくなにもされず…。

それが、2014年、ついに霜取りパンタが搭載されました。
1998年の播但線電化から待つ事16年!
GMの103系播但線を2編成持っているのですが、その内1編成は前パン準備車。
ここにパンタを搭載したいなぁとうらめしく見ていたので、
やっと搭載された嬉しさといったら、たまりませんでした。

まだ見た事がないんです…

とはいえ、実はまだ播但線には乗ったことがなく、写真が全くありません。
せっかくですので、前パンの103系を楽しみたいのですが、
霜取りパンタなので、夏には上がっている事はなく、冬に行かないとみられないですね。
早く見に行って乗って、楽しみたいです。

でも、模型なら存分に楽しめますので、前パンにしてしまった記事をご覧下さいませ。

参考文献)
鉄道ピクトリアル No.941 2018年1月号「特集 103系」
鉄道ピクトリアル No.999 2022年6月号「特集 先頭車化改造車」