前パン・第4回 西武30000系(池袋線に限る!)
前パン愛好会の第4回は、西武30000系「スマイルトレイン」です。
西武鉄道は、関東大手私鉄の中で一番前パンを導入している会社になります。
今回取り上げる30000系は、最新の前パンです。
凜々しさとかわいらしさの共存は、他では見られない電車ですね。
2連も登場・30000系
鉄道業界で、女性の意見を積極的に取り入れてできた西武30000系。
電車でたまごをモチーフにするなんて、なかなか男性の視点からではでてきません。
新生西武鉄道の象徴になった、優しいかわいらしい電車です。

池袋線・新宿線ともに、優等列車は10連ですが、
各駅停車はホームの長さの関係で8連が基本になっています。
先代の20000系は、8連と10連で新製されました。
各停用と急行用を分けた編成となったのですが、
各停は、短距離でかつ速度が遅いため、
急行用の10連と比べて、8連の方は走行距離が短くなる懸念がでてきます。
これを解消するには、8連を10両へと増結して急行用にも使えるようにすることで、
長距離の運用もでき、差が小さくなると考えられます。
実際にそのようなことが検討されたかわかりませんが、
30000系は2連が作られて、柔軟な運用が可能となりました。
新2000系以来の久しぶりの2連です。

2連だと「パンタを1個か2個にするか問題」が出てきます。
1編成にパンタが1個だと、1個だけのパンタが壊れると電気が取れずに動けなくなりますよね。
二重化、バックアップ、そんな考え方をすれば、パンタは2個あると安心です。
西武さんも、2連だけは2パンタにしました。
そうです、前パンが誕生したんです!
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クモハ 32100 | クハ 32200 |

前パンを見ることができるのか!?
2連で運用される支線はないので、単独で見ることはできません。
30000系の2連は、増結用になります。
8+2の10連で運用される準急以上の時に見ることができます。
ただ、ここで問題があります。
2連のどちら側に8連がくっつくのかです。
(もう、2連がメイン、8連がおまけになっていますね。)

これを見ればおわかりですね。
2連の後ろ側に8連が繋がらないと前パンになりません!
基本的には、増結は方向が決まっているのですが、西武線は両方ありえるのです。
それは、所沢駅の構造が興味深いからです。
奇跡の構造・所沢駅
所沢駅は、先に新宿線の元となる川越鉄道が南北に路線を開業しました。
その後、池袋線の元となる武蔵野鉄道が東西に延びてきたのですが、
交差する所沢駅は立体交差にすることはせず、川越鉄道に併設する形で開業しました。
地図を見ると、秋津駅と小手指駅を一直線で結べそうなんですけどね(右の図の緑線)。
武蔵野鉄道は、わざわざ大きなS字カーブで川越鉄道の所沢駅に並ぶようになりました。
なぜこうなったのか、鉄道ピクトリアルの西武鉄道特集を3冊読んでも、
そのあたりの理由を見つけることはできませんでした。
結果として両社が合併することになった現在から見ると、
並ぶことで路線をまたいだ自在な車両運用ができて良かったのか、
それとも直線になってレッドアローがスピードを上げられたのか…。
もし立体交差だとしたら、大和八木のような連絡線ができたかもしれないですね。
出典:国土地理院ウェブサイト 出典:国土地理院ウェブサイトより加工
ただ、並ぶように配線したとしても、都心と郊外の方向を揃えるじゃないですか。
秋津駅から左カーブからの逆S字だと方向は揃うはずなのに、
右にカーブからのS字にしたため、新宿線と池袋線の向きが逆になってしまいました。
ここには、何かしらの理由がありそうです。
そこで、武蔵野鉄道開業すぐの大正10年(1921年)測量の地図をみてみたいと思います。

この地図をみると、所沢周辺は農地(桑畑)が広がって、土地にゆとりはありました。
ただ、所沢の市街地(赤の円)は、所沢駅の北西側に広がっていたんですね。
逆S字に路線(黄色の線)を引いてみますと、完全に市街地にぶつかってしまいます。
武蔵野鉄道が1911年に免許取得、1915年開業と早期開業をしたので、
立ち退きの伴う市街地を避けるように路線を引くのは必然です。
このため、逆S字でなくS字カーブになったと考えられるのではないでしょうか。
また、旧西武鉄道(元・川越鉄道)が高田馬場に路線を延ばしたのは1927年ですから、
先に都心に向かったのは、武蔵野鉄道の池袋線になります。
新宿線はあとから逆方向に都心に向かったので、あべこべさに拍車がかかってしまったかもしれません。
このような構造の所沢駅ですので、
右に行く電車・左に行く電車、どちらとも都心に向かうことになりました。
ここで、ようやく本題の西武30000系に戻ります。
池袋線・新宿線で編成の融通を利かせて運用していますので、
この所沢駅の構造から、池袋線と新宿線では都心から見た編成の向きが反対になるんですね。
30000系の2連で考えると、前パンのクモハは、
池袋線では飯能向きになりますが、新宿線では西武新宿向きになるんです。

前パン30000系は、池袋線下りに限る
8+2連の10連で運行する場合、8連は都心側、増結2連は郊外側になるとすると、
池袋線と新宿線ではどうなるのでしょうか。
前の項目を元に、30000系を繋げてみてみます。

おわかりですね。池袋線だけが前パンになるんです!
(2021/1/25 追記)
どうやら違うようでした。
鉄道ピクトリアル2013年12月臨時増刊号「特集:西武鉄道」において、
”2連は8連の下り方に連結”、”本川越方と連結して新宿線初の30000系10連”との記載がありましたが、
現在は、基本的には2連の連結方向はクハにしているようです。
2000系の上りで、新宿方に2連を連結して颯爽と走っている写真を多く見つけました。
上り下りを優先にするのか、編成の向きを優先するのか。
あらためて、新宿線と池袋線の方向が反対なことの面白さが表れていますね。


こちらは池袋駅で撮影した増結10連ですが、このように前パンが先頭ですよね。
西武新宿駅では見られない光景可能性はあっても見ることができない光景です。
というのも、現在は、新宿線での30000系2連の運用はないとのことです。

かわいらしさの中で凜々しさのある「スマイルトレイン」の前パン。
池袋線の下り限定で駆け抜けていますので、ぜひご覧下さい♪
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