関越道の大雪は予想できなかったのか
令和2年12月16日~18日にかけて、大雪に強い関越自動車道が”雪が原因”で通行止めになりました。
立ち往生が発生したのが、16日の18時頃と言われており、そこから通行止めが始まったようです。
社長の記者会見では、「想定を超える雪の予測ができなかった」ことを要因の一つに挙げていました。
本当に予測ができていなかったのか?
ガイダンスの降雪量予測から考えてみます。
記録的な降雪量
上越国境周辺のアメダスのデータでみてみます。
下の地図が、アメダスの位置と地形、関越自動車道の関係になります。
津南、湯沢、みなかみ、藤原が積雪深を観測しており、塩沢は雨量計のみです。
アメダスで雪を観測している4地点の、15日からの積雪の変化と、最大24時間降雪量をみてみます。
なお、湯沢は、16日15時~17日5時までは欠測になっています。
24時間降雪量 | 観測史上1位の記録 (1989年より) | 48時間降雪量 | 観測史上1位の記録 (1989年より) | |
新潟・湯沢 | 113センチ (15日4時~16日4時) | 101センチ (2000/12/26) | 144センチ (14日14時~16日14時) | 131センチ (2014/12/15) |
新潟・津南 | 91センチ (15日3時~16日3時) | 113センチ (2014/12/14) | 149センチ (15日0時~16日24時) | 160センチ (2014/12/15) |
群馬・藤原 | 128センチ (15日5時~16日5時) | 112センチ (2010/1/1) | 199センチ (15日2時~17日2時) | 145センチ (2010/01/02) |
群馬・みなかみ | 91センチ (16日3時~17日3時) | 87センチ (1991/01/07) | 149センチ (15日14時~17日14時) | 118センチ (2001/01/06) |
やはり、観測史上1位の大雪だったのは間違いありません。
1日だけのドカ雪でなく、2日も続いたことで大きな影響が出たことになりました。
ただ、記録的な大雪のピークは、16日の午前中までのようです。
立ち往生が始まったのが16日の18時頃ということは、
運転する方、道路管理する方共に、
大雪の峠を一つ乗り越えて、ちょっと油断した時間帯で立ち往生が起きた可能性があります。
気象庁は予測できていなかったのか?
NEXCOは予測できなかったとの発言でしたが、
気象庁は今回の大雪は予測できていたのでしょうか。
15日5時発表の全般気象情報、地方気象情報、府県気象情報をまとめてみました。
15日6時~16日6時 | 16日6時~17日6時 | |
北陸 | 90センチ | 70~100センチ |
関東甲信 | 60センチ | 60~80センチ |
15日6時~16日6時 | 16日6時~17日6時 | |
新潟・平地 | 40センチ | 30~50センチ |
新潟・山沿い | 90センチ | 70~100センチ |
15日6時~16日6時 | 16日6時~17日6時 | |
群馬県北部 | 50センチ | 60~80センチ |
15日6時~16日6時 | 16日6時~17日6時 | |
中越・平地 | 40センチ | 20~40センチ |
中越・山沿い | 90センチ | 70~90センチ |
15日6時~16日6時 | 16日6時~17日6時 | |
北部山地 | 50センチ | 60~80センチ |
15日の群馬北部の降雪量が予想の倍以上となりましたが、その他は大体予想ができているかと思います。
特に16日は、80~100センチの雪が降る予想ということは、記録的な大雪になりそうと想定できるわけです。
それも、前日の15日の段階で情報を伝えており、16日は大雪に対して準備する時間は十分あったのではないでしょうか。
気象庁の予報を重視していたのか、それとも…。
ガイダンスは予測していたのか
では、予報の基礎となるGSMガイダンスの降雪量予測はどうなっていたのか、
15日5時予報のベースとなる、14日21時のガイダンスからみてみます。
15日6時~16日6時 | 16日6時~17日6時 | 17日6時~18日6時 | 合計 | |
群馬・藤原 | 54.3センチ | 64.1センチ | 54.8センチ | 173.2センチ |
群馬・みなかみ | 35.9センチ | 47.5センチ | 34.5センチ | 117.9センチ |
新潟・塩沢 | 38.4センチ | 50.8センチ | 29.8センチ | 119センチ |
新潟・湯沢 | 75.3センチ | 86.9センチ | 72.9センチ | 235.1センチ |
新潟・津南 | 70.5センチ | 83.1センチ | 64.8センチ | 218.4センチ |
気象庁の予測と変わらないですね。
やはり、気象庁はGSMガイダンスをかなり参考にしているようです。
特に湯沢は、3日間で相当な雪が降る予想なのがわかります。
メッシュ分布でみると、さらに雪の降り方がわかります。
16日6時までで80センチ以上の所があり、17日6時までではさらに80センチ以上のエリアが広がる予想でした。
100センチ以上の所も、奥只見湖周辺で予想されています。
それだけのポテンシャルがあり、50キロ程度ずれたら湯沢周辺に流れ込んでくるわけです。
独自予想をしていてもガイダンスは参考にするはずですので、
16日は記録的な大雪になると想定しないことはないでしょう。
課題は、最新の気象資料を知ってもらうこと
ここまでの資料を見ると、気象予報士としては予測をしていたと考えられます。
上空の寒気の様子、天気の場が2,3日変わらないことからも、危険な雪であると伝えない気象のプロはいないでしょう。
ただ、気象予測はあくまでも分析の基礎資料であって、最終的に判断するのは現場の長です。
長年の勘や経験、それに経済活動を止めることを考えると、気象予測をどこまで重視したのでしょうか。
天気は外れたときのイメージが残り、当てにならないという印象があるかと思います。
それに自然を相手にしているため、何かあったときの原因にしやすいものです。
人を原因にすると責任問題になりますので、避けたい気持ちが社長の会見に現れているかと…。
気象は自然災害ではありますが、人の判断で防ぐことのできるものです。
年越し寒波、7日からの三回目の寒波では、今回の教訓が活かされているように感じています。
ここ数年の気象資料の充実ぶりはすさまじく、精度も向上しています。
天気は天気の人のものとするのではなく、
責任を持つ方は、どんな気象資料があるのか知って頂ければ、
より正しい判断に繋がることになります。
そして、
それを伝えるのも、天気の人の仕事です。
予測だけをしていればいいという時代ではないでしょうね。
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