スポーツベットの払戻金の確定申告・回収率がポイント
スポーツベットとは、海外のブックメーカーによる、スポーツの試合を対象とした賭けのことです。
スポーツ”ベッド”ではないですからね!それだとどこかの市長になってしまいます。
的中した際の払戻金は、海外のサイトであっても確定申告が必要です。
そこで、注目する東京地裁の判決がありました。(参考:週刊「税のしるべ」令和2年10月26日より)
ポイントは、掛け金の回収率です。
裁判の概要
ある納税者が、海外のブックメーカーのサイトを通じて、スポーツベットを行い、的中した払戻金を3年間は無申告、1年間は一部のみ所得に含めて確定申告していました。
会社員をしながら、2年目以降は、年間300日以上も行っていたんです。
4年間で掛け金の総額は、およそ25億円!
ただし、払戻金は24億円ちょっとで、トータルでは赤字でした。
1年ごとでも、4年間一度も回収率は100%に届いていません。
赤字だったので、申告していなかったのかもしれませんね。
そのような状態であっても、税務署に気がつかれないことはなく、税務調査を受けました。
その結果、「一時所得」として、加算税を含めて総額2億5000万円に上る決定処分を受けました。
一時所得であれば、払戻金については申告して納税が必要となります。
この納税者は、これは「雑所得」であるということで処分の取り消しを求め国税不服審判所で争いましたが、棄却されました(平成29年8月24日 TAINS F0-1-850)。
今回の東京地裁の判決でも、同様の結果となりました。
一時所得と雑所得の違い
今回の裁判で争われた「一時所得」と「雑所得」。
事業所得以外の所得であり、一見すると共に大きな違いはないように感じます。
所得金額の計算でも、一時所得・雑所得ともに、
所得金額 = 収入 ー 必要経費
で計算されます。
ただ、実際は、天と地ほどの大きな違いがあります。
それは、必要経費の認識です。
一時所得 | 雑所得 |
収入を得るために「直接的に」要した費用 | 収入を得るために要した費用 |
その違いは、直接的ということです。
雑所得は、直接的な費用だけでなく、「間接的に」要した費用も控除できるため、範囲が広いんですね。
つまり、一時所得は「その時」の費用、雑所得は「期間」通しての費用ということになります。
今回のスポーツベットと同様の概念で、馬券の払い戻しがあります。
基本的には、一時所得になります。
馬券の必要経費は、「当たったレースごとに支出した金額」だけです。
第10レースのGⅠで万馬券を取ったからって、経費になるのは10レースに掛けた馬券のみになります。
その日の1レースから9レースまでの外れ馬券は、経費になりません。
入場券と交通費は経費になるかもですが。
勝った馬の新馬戦から前走まで見て研究しているんだって言っても、その馬券は経費になりません。
「あれ!?競馬の払戻金は雑所得になって、外れ馬券も経費になったんじゃないの?」と言う方がいるかもしれません。
よくご存じですね。
ただし、それは非常に特殊な例です。
競馬の馬券の払戻金に係る課税について
最高裁平成29年12月15日判決で、独自のシステムでほぼ全レースを購入し、年間の収支が100%を超える場合は、年間の配当金額から控除できる必要経費は、年間の外れ馬券の購入代金を含むことができると示されました。
判決に伴い、平成30年7月に国税庁は以下のお知らせを出し、通達を変更しました。
ただし、雑所得にできるのは、条件が非常に限られています。
・独自のシステムや配当率の組み合わせによる購入
・年間を通してほぼ全てのレースで購入(偶然性の排除)
・回収率が、期間を通して100%を超える
ことを客観的に示す必要があります。
この場合のみ、「営利を目的とした継続的な行為」として雑所得になると示されました。
どうでしょう?
厳しくないですか?
回収率が、年間通して100%を超えるんですよ!
2005年菊花賞ディープインパクトの100円元返しではだめなんです。
(2008年からのJRAプラス10だと1.1倍になっていいのかな)
JRAの払戻率をみると、単勝で80%からWIN5で70%(令和2年11月1日現在)です。
参考:JRA「馬券のルール」
1年間通して、平均してこれを大きく超える配当の出る買い方をしないといけないことになります。
継続的に行い、利益を出すのは相当な努力が必要です。
つまり、普通に楽しむ感じでは、雑所得になることはなく、外れ馬券は経費にならないです。
まとめ
今回の判決を当てはめてみると、ほぼ毎日スポーツベットを行って継続性があったにも関わらず、毎年赤字でした。
その結果、利益はないのに、払戻金には税金が掛かり、さらに支払をしないといけなくなったんです。
8000万円の赤字でも24億円ほどの払い戻しがあったので、2億5000万円の税金を支払うことになりました。
利益が出れば税金が安く、赤字だったら余計に税金を支払う。
赤字だからといって、甘いものではありません。
税務署はすごいですから。
楽しむには、ほどほどが大事ですね。
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